「陶芸は人との距離が近い。触ることができて、使えるというのが、すごく魅力」野田夏実さんの制作と今後の展開

陶器作品を制作するアーティストの野田夏実さんのインタビューをお届けします。
野田さんの制作の原点には、人と食事が深く関わっています。
作品はどのように生まれたのか、そしてどのように変化していっているのか。
テーマごとに3回に分けてお話をお伺いしていきたいと思います。

第3回目として制作の様子と今後の展開についてお聞きします。

過去2回のインタビューは以下からお読みいただけます。
第1回
「食事の場で生まれる人とのコミュニケーションが制作の原点」野田夏実さんが語る作品が生まれるまで
第2回
>>「ストーリーや感情、そこに居合わせた印象や温度感をいれていく」野田夏実さんに聞くコンセプトとモチーフ

 「陶芸は人との距離が近い。触ることができて、使えるというのが、すごく魅力」野田夏実さんの制作と今後の展開

 ” 効率よくしてしまうと、自分も制作が楽しくないし、

ものが面白くなくなってしまうかなと思っています ”


 制作の様子を教えてください 

ー 制作の様子を教えていただきたいのですが、1点ずつ手作業で制作すると、時間がかかりますよね。

はい。野田夏実もイムスタンも全部手びねり(注1)なので、時間はかかります。
絵柄を考える時間も必要で、絵付けの時間もかかりますし、絵付け部分も周りの縁も全部筆で釉薬を塗り分けているので、思いの外時間がかかっています。
2ヶ月くらいでも20点とか。
効率よくないよ、とは言われるんですけど。(笑)
効率よくしてしまうと、自分も制作が楽しくないし、ものが面白くなくなってしまうかなと思っています。
 ただ、今後はそういうラインもやっていけたらいいなと思っています。
型を使って、手に取りやすい、値段も安めのものです。初めて手に取る方は、入り口として、そういったものから知っていただいて、段々とイムスタンや野田のラインも知っていただけたらいいかなと思っています。

「陶芸は、触ることができて、使えるというのが、すごく魅力」野田夏実さんの制作と今後の展開

ー 全部お一人で制作されているんですよね。
そうです、そうです。
成形して、素焼きして、絵付けして釉薬をかけて本焼きしてと、すべての工程を一人で行います。  
ー 購入された方には使ってほしいものでしょうか?

コンセプトとしても食事の場というのがあったので、最初はそう思っていたのですが、飾りたいという方もいらっしゃるので、今はあまり気にしていません。
特に野田(「野田夏実」ライン)の方は、作家として活動をはじめた頃に、地震対策として壁にかけられるようにしてほしいというご希望をいただいて、今はお皿の裏面に展示用の紐を通せるようにしています。
食器棚にいれてしまうと、もし被害があったときに全部壊れてしまうので、壁にかけたほうが揺れたときに被害がないし、なおかつ重ねなくていいからお皿の保護としてもいいと。
お客様によって半々ぐらいですね。すごく使ってくださる方と、飾って楽しんでいただいている方と。

制作風景

” 工芸とか陶芸は、触ることができて、使えるというのが、

すごく魅力だな、と思っています。 ”


今後の展開について教えてください。

ー 今後の展開として考えられていることがあれば、教えてください。
やっと最近、素材の方にいってもいいのかなと思っています。
例えば釉薬は今は単純な調合をベースにしていて、絵付けをメインにしているので、釉薬でも遊べるといいなと思っています。
今回制作したレリーフを貼るシリーズがあるのですが、それも釉薬で面白い調合をできたら更に表情も出るかなと想像しています。
野田の方も今は、一面同じ色なんですけど、素材をもっと試して別の表情を見せられるといいかなと思っています。
あとは、先ほどもお話しましたが、モチーフは布からもらっている部分が多いので、自分の作った植物のモチーフをまた布にしたら面白いかな、というのは考えています。
ー テキスタイルですね。
 はい。陶器は作れる数に限りがあるので、あまりにも届けられる量が少ないというのもあります。季節によっても、乾きがいい日と悪い日があったり、天候にも左右されます。それが面白いところでもありますが。
ー 最後に一言お願いします。
工芸とか陶芸は、触ることができて、使えるというのが、すごく魅力だな、と思っています。絵とかは触れないですよね。
工芸は人との距離が近い分野だと思います。
実際に使用できたり、絵画や彫刻よりも手に取りやすい価格帯で、特に陶芸は直接粘土を手で触りながら作っているので、手から意識や考えていることが、より出やすい素材だと感じています。
だからこそ私自身が土の感触や、絵付けのモチーフ、釉薬の変化した様子をやりとりして楽しんで作ることができている。これも野田とイムスタンのどちらも共通していることだと考えています。
そして、その楽しさや面白さが、手に渡った人の日常に少しだけでも明るい方向に働けばいいなと思ってます。  
ー 面白いお話をたくさんお聞かせいただき、ありがとうございました。

(注1)手びねり
陶器を成形するさいに、ろくろや型を使わずに、手で粘土をこねたり伸ばしたりして作ること。またそうして制作した陶器のこと。形の制限がなく自由なかたちを制作できる。

「陶芸は、触ることができて、使えるというのが、すごく魅力」野田夏実さんの制作と今後の展開

 

2023年7月からLUCKYRECORDSで「野田夏実/Imustan」の作品を販売しています。マグカップやゴブレット、カフェオレボウル等、新作シリーズも含めたラインナップとなっています。ぜひこの機会にお手に取ってみてください。

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