コンセプチュアル・アート

 そもそも現代アートは分かりづらいというかたも多いのではないでしょうか。正直、理解できているかどうかわからないことも多いけれど、新しい表現に出会うたびワクワクしたり、ドキドキしたり、気持ちを掻き立てられたり、嫌悪したくなるような自分の感情に気付かされたり・・・。それでいいのかな、と思っています。

コンセプチュアル・アートとは第二次世界大戦以降、欧米を中心に広がった欧米を中心に進んだ反芸術的かつ芸術そのもののあり方を問い直す傾向です。
分かりづらいですよね・・・。
簡単にいうと「アートとはなにか?」を真剣に考え、「これがアートだ!」とアーティスト自身が考えた方法で表現することにこだわったムーブメントと考えていいのではないでしょうか。現代アートが分かりづらいと思われる原因のひとつはここにあるのではと思っています。なぜかというと、前述の通り真剣に考えた結果、コンセプチュアル・アートのアーティストたちは「アートとは、結果としてできあがった作品ではなくて、その作品を制作するに至ったアイデアやコンセプト自体なのではないか?」と考えたから。つまり、「アートって本当に目に見えている作品のことなの?」と、とんでもない根本の疑問を呈して見せたのです・・・。
目に見えている絵画や彫刻といった物体ではなく、コンセプトこそが大事なのだと。
ここです。コンセプト。
コンセプトを理解しないと、わからない作品が結構多い。目に見えるものだけではなんのことやらさっぱり・・・という状況が発生してしまう。この後の時代にはやっぱり結果としての作品は大事だよね、という流れも出てきますが、それは別でお話したいと思います。
そのためこの時代の方たちはコンセプトを伝えるため、色々な手段を取ります。例えば手紙を送ったり、印刷物を作って配ったり。結果としての作品から開放されたので、一過性のパフォーマンスやイベントを重視するような動きも出てきました。
今回はそんなコンセプト重視のアーティストの作品集などを紹介します。

オノ・ヨーコ
ビートルズの主要人物ジョン・レノンの奥様としての知名度が圧倒的に高いですが、本質は非常に前衛的なアーティストでした。史上最大の問題作、無音の音楽作品「4’33」の作者として知られるジョン・ケージの教え子たちが中心となって組織したフルクサスというグループに所属しました。フルクサスは絵画や彫刻といった実体を伴うアートではなく、パフォーマンスやイベントなど一過性の高い表現を重視しました。
こちらの本はオノ・ヨーコの1960年代〜1970年頃までの活動をまとめたものです。

 Yoko Ono: One Woman Show 1960-1971


塩見允枝子
オノ・ヨーコと同じく、フルクサスに参加したアーティストです。東京藝術大学楽理科を卒業し、小杉武久、水野修大孝、刀根康尚らと「グループ・音楽」を結成し、ナム・ジュン・パイクによってフルクサスの中心人物であったジョージ・マチューナスに紹介される。以降フルクサスに参加し、イヴェントや、郵便を利用した作品などを制作します。



ダニエル・ビュレン
ストライプを街中に配した作品で有名なフランス人アーティストです。唐突に都市空間に現れるストライプは、それまで美術館やギャラリーに足を運んで見たいと思った作品を鑑賞するという当たり前の行為を否定します。見たいと思っていない鑑賞者に対し、暴力的にその視界に入ってくるのです。これもそれまでのアートの否定です。

Daniel Buren Underground-Eleanor Pinfield|ダニエル・ビュレン


フェリックス・ゴンザレス=トレス
トレスはいわゆる戦後のコンセプチュアル・アートに分類される作家ではなく、1957年生まれで80年代以降にアートシーンで活躍したアーティストです。その作品は、積み上げられた紙や、自身と恋人の体重と同じだけのキャンディーのインスタレーションなど、また来場者に作品の一部である紙やキャンディーを持って帰えることを許すという、まさにコンセプトの理解が必要不可欠なものです。しかし作品は、美しいインスタレーションで是非作品集を手にとっていただきたいと思います。

Felix Gonzalez-Torres-David Breslin|フェリックス・ゴンザレス=トレス(英語)

他にも色々なコンセプチュアルなアーティストの作品集を紹介しています。是非ご覧ください。

>>コンセプチュアル・アート特集