コレクション: 工藤玲那
明るいうちは下を向いて歩きます。
メモとかレシートとか、人の残した痕跡を探すことが好きなので。
暗くなると、どうせ何も見えないので首が痛くならない程度上を向いて歩きます。
星の明るさに集中すると、暗い道の怖さから意識を遠ざけることができます。
信号も、街灯も星も点滅しています。
コンクリートの上を歩いているのにバカ(※)がズボンについてきます。
深夜に爆音でバッハをかける家を通り過ぎて、動物の鳴き声や走り去る音にビビりながら歩きます。
人が住んでるのに誰もいない、を体感するのが好きです。
みんなが寝静まった時間に活動して、みんなが起きている時間に寝る。
幸せを感じます。
不穏さが心地いいです。
工藤玲那
工藤玲那さんの作品を紹介します。工藤さんは陶器を中心に絵画やドローイングなど様々なメディアや素材を用いて表現しています。
今回紹介する「Cup Flavored Drawing」は、陶器によるドローイング作品のシリーズで、絵画作品におけるドローイングのような位置づけで、素材や造形、テーマなどの実験が行われています。
「夜」を中心的なテーマとした今回の一連の作品について、工藤さんとの対話からは宮沢賢治、石、時間といったキーワードを聞くことができました。作品を手にとると、一つ一つ異なる夜の風景が見えてきます。ぜひこの機会に作品をご覧ください。
作品について、詳しい解説はこちらからご覧いただけます。
(※)バカとは、衣服にくっついてくるトゲトゲとした植物の実のことで、主にオナモミとよばれる植物の実を指します。地方によって呼び方が異なり、バカの他、ひっつき虫、くっつき虫、どろぼうなどともよばれます。
工藤玲那
1994年、宮城県生まれ。2017年、東北芸術工科大学芸術学部美術科洋画コース卒業。
様々な土地を転々としているうちに混ざりあうアノニマスな記憶、捨てきれない幼い頃の自分、唐突な夢…、個人的な混沌をベースに、絵画や陶芸、ドローイングなどの表現で、見たことがあるようで見たことがない世界をつくり出している。現在は拠点を持たず、アジアを中心に各地に滞在、横断しながら制作している。
https://www.renakudoh.xyz/
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