出版社:torch press
言語:日本語/英語
サイズ:28.0 x 21.6 cm
執筆:梅津 元、山口信博、杉浦花奈子
展示風景撮影:高野ユリカ
デザイン:林 琢真
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カール・アンドレ(1935–2024)は1960年代後半のアメリカを中心に興隆したミニマル・アートを代表する彫刻家です。日本の美術館において初めての個展となる本展は、同一の形と大きさに加工した木、金属、石を床に直接置き、規則的に広がるアンドレの典型的な彫刻作品を大きな空間で展開します。アンドレは自身の作品が、それが置かれる周りの空間に作用するものであることを「場としての彫刻」という言葉で表しています。
整然として無機質な印象とは裏腹に、実際の作品を前にすると、金属の光沢や錆、木の手ざわり、石の重みなど、物質それ自体の大らかな姿を目にすることができます。不揃いなユニットが並んでいることにも気が付くことでしょう。また、本展では知る人ぞ知るアンドレの詩をまとまったかたちで紹介します。タイプライターで断片的な単語を打ち込んで構成されるアンドレの詩は、読むことでも眺めることでも楽しめるものです。彫刻に通ずる空間的、構造的な認識や、文学、美術、歴史、政治など作家自身の幅広い思考が反映されています。
展覧会図録となる本書では、展示のインスタレーションビューを皮切りに、彫刻や詩の作品などを織り交ぜ、充実したテキストと共に収録。特に詩のページでは、印刷や紙も作品と近づけ、原寸大で印刷することでその作品性を体感できます。表紙はアンドレ作品のコンクリートユニットをイメージしたデザインを施し、三方小口をグレーに塗装することで、本全体でアンドレ作品を体現しています。彫刻と詩という離れた表現で展開する、簡潔ながらも単純ではないアンドレの作品と出会うことができます。