"崇高のリミナリティ" 星野太

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Title: 崇高のリミナリティ
Author: 星野太
Publisher: フィルムアート社
言語: 日本語
サイズ: 19.5 x 13.0 cm


「超越的なもの」から「水平的なもの」へ。
崇高な(sublime)ものから閾的な(subliminal)ものへ、そして境界的な(liminal)ものへ。

現代思想、美術、文学、批評理論……「崇高」という美学の一大テーマを日常に開き、
現代美学のエッセンスをつかむための思索と対話。

池田剛介、岡本源太、塩津青夏、佐藤雄一、松浦寿輝との対話、崇高をめぐるブックガイドを所収。

本書は、美や芸術をめぐる思想においてとりわけ重要な位置に置かれてきた「崇高」というテーマを、その美学の問題圏においてのみならず言語や倫理、政治をはじめとする諸問題にも目を向けながら、それがいかに今日的な意義を担いうるかを検討していく実践の書である。

古代から現代までのおよそ2000年あまりに及ぶ崇高の概念の主要な論点の整理と、現代的な「崇高の美学」の複数の可能性を提示する10の断章からなる序論、
池田剛介(美術作家)、岡本源太(美学者・哲学者)、塩津青夏(美術史家・学芸員)、佐藤雄一(詩人)、松浦寿輝(詩人・仏文学者)との5つの対談、
古典、美術、研究書、文学・批評理論、現代思想の分類のもとに、さらに崇高の概念を学ぶための50冊のブックガイドを所収。

「崇高」という美学の一大テーマを日常に開き、その今日的な可能性の検討を実践した、現代美学のエッセンスをつかむための新しい定番となる一冊。

カバー写真:池田亮司《spectra》

これから行なうのは、「崇高」なる概念をひとつのプリズムとして、美学をはじめとする複数の領域をわたり歩くための準備作業である。この概念は、それを美学の一カテゴリーとして囲いこむのではなく、言語、倫理、政治をはじめとする複数の問題へと開いたときに、おそらくその最大のポテンシャルを発揮する。本書がめざすのもまた、崇高なるものを媒介とする、そうした境界領域(リミナリティ)の探求にほかならない。

こうした限界(リミット)のうちにある「崇高」──おそらくそれは、唯一の超越性へと結びつけられた(否定)神学的な「崇高」ではなく、日常的なあらゆる境界のうちに見いだされる世俗的な「崇高」の可能性を開くだろう。「超越的なもの」から「水平的なもの」をめぐる思想へ。あるいは一なる〈対象X〉へとむかうのではない、「ここ」と「よそ」の境界をめぐる(liminal)思想へ──

星野太
1983年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。現在、東京大学大学院総合文化研究科准教授。専攻は美学、表象文化論。主な著書に、『崇高の修辞学』(月曜社、2017年)、『美学のプラクティス』(水声社、2021年)。主な訳書に、ジャン゠フランソワ・リオタール『崇高の分析論──カント『判断力批判』についての講義録』(法政大学出版局、2020年)などがある。