ART POWER 100 2021
ART REVIEWによる2021年のPOWER100が発表されました。(https://artreview.com/power-100/)1位はERC-721。簡単にいうとNFTのことで、NFTの規格名のひとつです。今年の3月にオークションハウス大手のクリスティーズで、BeepleのNFT作品が約6900万ドル(日本円で75億円)という驚くべき価格で落札されて以降、アートの世界で大きな話題となりました。ブロックチェーンの非中央集権的な思想と、デジタルデータに唯一無二であるという証明を付けられるという仕組みは、アートの世界に大きな期待と困惑を与えたことは間違いないと思います。その後もウルス・フィッシャーやプッシー・ライオット、ダニエル・アーシャム、ダミアン・ハーストといったアーティストがNFTでの作品を発表しました。今現在はNFTを介したコミュニティーの形成に焦点があたっているように思います。まだ始まったばかりの仕組みに、今後アーティスト達がどのように反応していくのか、とても楽しみです。
2位以降は、ここ数年の流れでThinker(思想家と訳すのが適切でしょうか?)の台頭が目を引きます。2位のAnna L. Tsing(アナ・ツィン)はアメリカの人類学者で、フェミニズムや人新世(アントロポセン)などを研究対象としています。こちらは改めて書籍などを紹介したいと思います。アントロポセン、キーワードになっていますね。またアート・コレクティブも多くランクインしています。現代アートにおける非常に重要な賞である、イギリスのターナー賞も今年はファイナリスト5組全てがアート・コレクティブでした。Tokyo Art Beatさんのこちらの記事で授賞式の様子がレビューされています。https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/turnerprize2021_arraycollective
5年前のPOWER100と比較してみると、アート・ワールドは徐々にでも着実に変化しているのがとてもわかりやすいと思います。(写真ご参照)2016年には、アーティストと並んでメガギャラリーのディレクターや有名美術館の館長などが上位を占めていたのに対し、現在は思想家やアートコレクティブがそれに取って代わっています。この状況は何を示しているのでしょうか。高額で作品が売買されるアート・マーケットは変わらずあり続けるのでしょうが、そうではないアートのあり方を模索する動きが、もはやメインストリームとなりつつあるのかもしれません。ターナー賞のアナウンスには一つの方向が示されているように思います。
”All the nominees work closely and continuously with communities across the breadth of the UK to inspire social change through art. “
ノミネートされたアーティストは皆、イギリスの幅広いコミュニティーと密接にまた継続的に活動し、アートを通して社会変革を促しています。