Title: "パウル・ツェラン詩文集"
Author: パウル・ツェラン
翻訳: 飯吉 光夫
Publisher: 白水社
言語: 日本語
サイズ: 13.7 x 19.4 cm
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「あの日」から私がもとめたのは、死者たちを「悼む」言葉ではない。 彼らと「ともにある」ための言葉だ。そこにツェランの言葉があった。 絶対的な脆弱、絶望的なまでの希望、そして戦慄的な優しさをはらむ言葉が。 ――斎藤環(精神科医)
2011年3月11日の東日本大震災後の現在、詩人パウル・ツェランの言葉がかつてないほど私たちの心に強く響く。
ツェランは1920年、旧ルーマニア領チェルノヴィツでユダヤ人の両親のもとに生まれた。第二次世界大戦中に両親はナチスによって強制収容所に送られて亡くなり、彼だけが生きのびた。
「もろもろの喪失のなかで、ただ『言葉』だけが、手に届くもの、身近なもの、失われていないものとして残りました。」
戦後の荒廃した状況の中で、彼は言葉だけを信じ続け、詩を書くことだけを精神のよりどころとして生きてきた。苦悩をくぐり抜け、生涯に九冊の詩集を遺したが、精神を病み、70年にセーヌ川に身を投じた。
死者に手をさしのべ、交信しようとする魂の言葉。誰かの心にたどりつくことを信じて語りかけられた言葉。二十世紀の最も過酷な歴史を生き抜き、極限状況と絶望的な苦しみの体験から紡ぎ出された言葉が、未曾有の大災害に見舞われた私たちの思いと共鳴しあう。ツェランの言葉への強い信頼が希望につながる。
全詩篇から精選した代表作34篇と、詩に対する思いを表白した全詩論を収録。ツェラン作品の最良の理解者による渾身の訳業の決定版。各篇ごとの丁寧な解説と年譜を付す。斎藤環氏推薦!