梅津 庸一著
出版社: アート・ダイバー
出版社サイトよりーーーーーーーーーーーー
1982年生まれの現代美術家・梅津庸一の存在感は、ここ数年、非常に高まっています。実作での評価はもちろんのこと、その鋭利でイメージ豊かな言説や、私塾「パープルーム予備校」の創設は、多くの人を巻き込みながら、美術界にひとつのうねりをおこしています。
梅津の作品は、近代洋画の様式から受験絵画メソッドなどをベースに、柔らかな色彩に溢れた官能的なものですが、その背後には一貫したコンセプトが流れています。それはデビュー作となる2005年の《フロレアル(わたし)》にすでにあらわれており、その後もバリエーションを加えながら、現在まで深化し続けています。
タイトルの『ラムからマトン』には、「ラム」(子羊の肉=デビュー時)から「マトン」(成長した羊の肉=現在)までという意味が含まれています。同様に、この本には、デビュー作から現在に至るまでの代表作をカラー図版で掲載しています。
そして、それら梅津の作品や活動に対し、気鋭の評論家やクリエイターたちがそれぞれの視点から文章を寄せていただいたのがこの書籍です。1980年代生まれを中心とした、間違いなく今後の美術批評を担うことになる論客たちによるテキストは、いかに梅津庸一を読み解き、美術に新たな展望を与えるのでしょうか。
加えて、梅津自身によるテキストで、多くの批評家に注目を浴びた「優等生の蒙古斑」も再収録。こちらも必読です。
また、デザインには『コンテンポラリー・アート・セオリー』(イオスアートブックス、2014)での美しい装丁が記憶に新しい木村稔将さんを招き、上製本+スリーブケースの豪華なつくりとなりました。ケースに貼られた表紙絵は4パターン。アートブックともいえるような美しい仕上がりになっておりますので、ご期待ください。
アーティスト略歴:
梅津庸一(1982年山形県生まれ) は東京造形大学卒業後、ラファエル・コランの代表作「フロレアル」を自らの裸像に置き換えた「フロレアル(わたし)」でデビュー。2006年には、同作品を含む「銀色の僕」で第9回岡本太郎記念現代芸術大賞展準大賞を受賞。2014年、黒田清輝の「智・感・情」をアップデートした、4枚の絵画により構成される「智・感・情・A」を発表し注目を浴びた。日本近代洋画の表層的なシミュレーションに留まることなく、絵画の制度的な側面や受験教育の痕跡を辿る試みを絶えず模索し制作を行う。並行して、「絵画説明会」 (2011 年、スプラウトキュレーション)、 「であ、しゅとぅるむ」 (2013 年、名古屋市民ギャラリー矢田) で企画された 「優等生」 などを経て、梅津は不定形の理想共同体 「パープルーム」を創設。「パープルーム」とは梅津が主宰する私塾のことで、自宅で20歳前後の生徒5名と共に制作、共同生活をし、様々なゲストを交えながら日々活動している。 2015年の展覧会「パープルーム大学物語」(2015 年、ARATANIURANO) では、集団化された芸術空間が高密度に実現された。